「木村伊兵衛写真賞の30年」川崎市市民ミュージアム

写生

 1975 - 2005の木村伊兵衛写真賞を受賞した作品展。

 初期の作品はモノクロがぼんやりしていて、カチっとピントが合っているよりもしっとりしているように感じました。特に石内都の「APARTMENT」の廊下の写真は人がいないのに艶やかな質感があります。畠山直哉の「LIME WORKS」はひたすら石灰工場の写真なのだけれど、工場独特の無機質な雰囲気がとても惹き付けられました。雪が積もっている写真はたまりません。無機質なものと自然なものとが混ざるととても寂し気な雰囲気になるように思えます。

 現在の作家は、ホンマタカシ川内倫子HIROMIXなどどこかで写真は目にしていると思うのだけれど、彼らの作品として観るのは初めてだったのでどきどきしました。

 中野正貴の「東京の窓景」はいろいろな窓からみえる東京の写真で、若干作られた構図で機械的かつ画面が密すぎるのだけれど、File006と077は生活感と画面の空白があっておもしろかったです。鈴木理策の「PILE OF TIME」の青空にほんのまめつぶの白い飛行機の写真は、くすっと笑いたくなります。

 個の強い写真家の作品なので、どれもテーマ性が強く、かなり見ごたえがありました。時代によるテーマのとらえかたが30年の長さを感じます。ただ、美術館のライトがちょっときつく、反射して観づらいところも若干あり、かな。

●家からみえる市ヶ谷駐屯地のアンテナ