一度だけの出会い

3月くらいのこと。
今の会社に入る前、2社ほど面接を受けにいった。
その1社では2人面接で、見事な圧迫面接であった。
面接が終わったあと、偶然一緒に面接を受けたその人と、
折角なのでとお茶を飲みにいった。


広告代理店で長いキャリアを持つ素敵な人であった。
気がつけば、さっきの面接のこと、
今までの仕事の話や、会社を辞める理由や、これからのことなんかを
長い時間話していた。
「お互いいい出会いがあるといいですね」と話も終わりかけたとき、
「これからどうするのですか?」と聞かれた。


私は、
「折角銀座に来たし、気分転換に映画でも観ようかと」と返事をしたら、
「私もいこうかな」ということになった。


ちょうど銀座で、
周防正行監督の「それでもボクはやってない」が上映されていた。


その日、初対面の我々は隣同士に座って映画を観た。


観終わった後分かれて、
実はそれっきりお互い連絡をとっていない。


きっと、彼女にも素敵な出会いがあったに違いない。
私個人は、一緒に面接を受けた会社で
働いているのではないかなと想像している。
そうあって欲しいな、との希望も少しあるかな。


8月に「それでもボクはやってない」のDVDが発売されるそうだ。
きっとこの映画を観るたびにその人との出会いのことを思いだすだろうなぁ。


映画はとても静かで、とても現実的な作品であった。
ルールって正しいと思ってしまうけれど、真実ではないこともある。

                      • -

映画「それでもボクはやってない
監督:周防正行
出演:加藤亮、瀬戸朝香山本耕史もたいまさこ役所広司
http://www.soreboku.jp/index.html

                      • -